- el estudio de arquitectura miyahara -
 
House_Ig 個人化家族の家


はじめてお会いしてから約3年、ようやく完成した住宅です。ちょっと仰々しく「個人化家族の家」と名付けられました。この家、実はご夫婦と子供2人という普通のご家族の家なのです。しかも皆さんとても仲が良さそう。では、なんで「個人化」なの?と不思議に思われるかもしれません。
成人して会社に勤め、自分の部屋を持ち、電話は携帯電話、自分の銀行口座があって、食事も外食が中心。何をするにも決定をするのはほとんど自分という方、もし一人暮らしをされていたら、単身者家族と分類される生活なのですが、親御さんと同居されていたら、普通の核家族になってしまいます。そこで、ここでは「みんなが大人の家族」=「個人化家族」と名前を付けたのです。では「個人化家族」の家って?  昔なら各人の個室と家族が集まる暖かなリビングがあれば、まぁ、良い家でした。でも個人化した家族にはどんな家が必要なのでしょうか?
都市計画では、小さな公園(ポケットパーク)が町にちりばめられ、何時でもそのスペースを利用出来る状態としておく事で、人々に潤いや寛ぎを与え、魅力的な都市空間となると言われています。これをヒントとして、この住宅では、それぞれに魅力的な4つの個室、そして4つの楽しみの場所(家の中のポケットパーク)を設けました。1つ目はシマトネリコを植えた中庭、勿論リビングルーム、2階に共有の書斎スペース、そして最後はFRPのグレーチングで出来た共有バルコニーです。これらは、お互いに気配を感じ取れる程度に接続されていて、家族のコミュニケーションが次の共有空間へとつながっていく様に計画されています。成人し、個人としての生活時間が長くなった家族が、住宅の内部で様々な場所と手段で自然と集えるような、そんな住宅を目指しました。

さてお引越し後4ヵ月後にお邪魔して、どうお住まいになったかと恐る恐るお宅を拝見したところ、共有の書斎には2台のコンピュータ、共有のバルコニーには各自のプランター、植木鉢が山と置かれて足の踏み場も無いくらい。
「個人化家族の家」どうやら何かが始まっているようでした。

 


宮原輝夫 宮原建築設計室